来客








十月十三日



ガチャ

ここは人気のない森の奥
そこからドアが開く音がした
洞窟から人が出てくる



「あれから一日…もう決着は付いてる頃ですね」



中から出て来たのは霧だった
昨日の戦いの疲れが出たせいか
霧は目覚めた時にはもう日が上ってから大分たち
子供が外で遊んでいた

日がさす事のないこの森は未だに暗いままだ

深く深呼吸をするその一息は
疲れきった体を隅から隅まで癒していった



「……昨日は頑張りすぎましたかね…」



魔術師の異名をもつ霧その名は
彼の不気味な色をした右目から発せられる力を
魔術と当てはめた所から来ている

霧の右目は今から約十年前
悪魔と魂の契約をして得た
神の領域に踏み込んだ禁忌の力
霧はその力のほんの一部を幻術として使用している

それは霧が望む事を叶えるには十分すぎる力だったから
強力すぎる力故に暴走したら
今の霧の力では制御が効かなくなるから

だから霧は力に制限をつけている
自分の望み以外の事に力を使わないように
もしそれでも暴走したらそのまま力にのまれ
ただの破壊を望むだけの殺戮人形と化してしまう

これがこの力を得た代償の一つである



カサッ



「!?」



すぐに霧は気付いた

足音だこんな人気のない森奥に人が!?
民間人ではない…
敵か!?
その足音はどんどん近づいていく



ガサガサガサ



「ぷはぁ!」

「ジョット!」



なんと茂みから出てきたのはジョットであった



「な……何故…貴方がここに!」

「何故って…来たかったから?」



首を傾げるジョットに霧は深くため息をついた
信じられない身内の裏切りよる奇襲により
ボンゴレ内部がゴタゴタしている時に
肝心なボスが留守にするなんて…



「む……霧…俺はもうボンゴレには帰らないぞ…」



心を見透かされた!!
ってそっちではなくて



「どういう事です?
仲間に裏切られたからで残りの仲間も見捨てるって事ですか?
器の小さい男だったって事ですか!」



ジョットを睨みながらそう…言う



「違うぞ…俺はもうボスではない…ただそれだけだ」

「?」



ジョットはボロボロなマントについた葉っぱや枝をはらいながら
洞窟の奥にあるジョットお手製の秘密基地へ足を向ける



「とりあえず中へ入ろう」



あまーい紅茶の香りが部屋中に充満する



「で…さっきの話ですが…
ボスではない!とはどういう意味ですか」

「そのままの意味だ」



ジョットはいれたての暖かい紅茶にあう
お菓子をジョット専用お菓子箱から探しながらそう答える



「意味がわかりません」



ジョットがやっと紅茶にピッタリなお菓子を見つけたのか
お菓子を抱えながらヤレヤレ
と言わんかばかりに席に座る

一端手に抱えていたお菓子をテーブルに置き
懐から何か取り出そうとしている


だが霧はそんな行動よりジョットが置いた
お菓子の方が気になるみたいだ



「せ…せんべい?」



霧がお菓子に夢中の間にジョットは
お目当ての物を見つけ出す


それは一つの封筒だった
ジョットが開け中からまた一枚の紙を取り出す

その紙にはジョットの炎が点されていた



「これと同じ物をそれぞれの同盟ファミリーのボスに届けた」

「これは…!」



霧はその紙を手にとる

その紙にはボスの引き続きに
ついての文章が短く書いてあった



「な…どういう!!」



これには流石に動揺を隠せなかった



「かわいいな…霧は」



愛玩動物を見るかのように霧を見つめる



「な!やめて下さい!!
気持ち悪い…昔とは違うんですよ!」



頬を赤らめながらそう言い睨みつける
そして話を反らすかのように先程の話の続きをする



「で…こ…この紙に書かれているのは何ですか?」

「見てわからないか?ボス交代の報告だ」



せんべいの袋を開けながら
表情一つ変えずにそう答える

そんなジョットに霧は苛立ちを覚えた



「そんなのわかってます!
僕が聞きたいのはこれの理由です!」



大きくテーブルを叩きながら大声でそう叫ぶ
あまりにも強く叩くのでテーブルに置いてあった
カップが少しだけ上にジャンプしていた



「霧は何が不満なんだ?」



その言葉は予想よりも遥かに霧に打撃を与えていた



「え…?」



元々マヒィアという存在に心よく思っていない霧が
ボンゴレに在籍したのはジョットがいたからである
身寄りの無かった霧を拾い育ててくれた霧の大切な育て親

そんなジョットがボンゴレを抜けるって事は
霧にもマヒィアから抜ける理由が出来たって事だ

なのにとめると言うのはおかしな話である



「マヒィアに情でも移ったか?」



優しく語りかける

霧は大分困惑していた頭の中で
自分の行動の真意を必至に探す



「ふ……やはり霧は可愛いな!」



またしてもその言葉が出てきた



「ん…まぁ理由位話してやる…
ボンゴレの為に働いてくれたご褒美だ」


-NEXT-











2009.7.19